認知的断想/マジカルナンバーと7件法 - 井関龍太のページ

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認知的断想/マジカルナンバーと7件法

Last-modified: 2013年09月28日 (土) 18:01:48 (1871d)
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実験で使う評定尺度を何件法にしたらいいかという話をしているときに,マジカルナンバー7だから7件法がお勧めと聞いたことがある,という意見が出ました。

なるほどね,と思うべきところなのかもしれませんが,私はそれは話が逆なのでは?と思ってしまいました。
というのは,以前にMillerの論文を読んだとき,7件法はむしろマジカルナンバー7の根拠として挙げられていたように記憶していたからです。
つまり,世の中にはいろいろと7でまとめられる例が多い(七福神とか)。そのひとつとして7件法もある。ほら,こんなにあちこちマジカルナンバーが……という具合です。

この論法が正しいとすると,7件法はむしろマジカルナンバー7の根拠として挙げられているのだから,「マジカルナンバー7だから7件法がよい」というのは循環論法なのではないかと思ったわけです。

実際にMiller(1956)を確認してみると,以下のように述べられていました。
(私が読んだのは,ミラー, 1972の方ですが,心研方式だとこういう引用の仕方になるかと思います。ただ,以下のように本文を引用する場合はどうするのが正式なのかはちょっとわかりません。)

「世界の七不思議,七つの海,七つの大罪,…(中略)…また,7段階の評定尺度,…(中略)…はどうであろうか。…(中略)…こうしたすべての“7”の背後には,何か深遠なものがあって,私たちの発見を待っているのかもしれない。しかし私は,むしろ有害なピタゴラス的偶然ではないかと疑っている。」(ミラー(高田訳), 1972, p. 43;強調は引用者による)

思っていたよりもずっとマイルドな書き方で,「これが根拠だ!」と威勢よく挙げているわけではないようです。
これは論文の末尾の部分なのですが,最後に懐疑を残して終わっています。
ただ,書き方としてはやはり根拠というか,マジカルナンバーの傍証となる一例として読めると思います。

では,やはり「マジカルナンバー7だから7件法がよい」という主張は循環論法であり,誤りなのでしょうか。

ところが,最近,私はこの主張も実は適切なのではないか,と疑うようになってきました。

確かに,Miller(1956)が最初にマジカルナンバー7を主張する際に(そんなに強い主張でもないのですが),「7件法にも見られるように,マジカルナンバー7は普遍的である」と言いながら,同時に「マジカルナンバー7だから7件法がよい」と主張したとしたら循環論法です。

しかし,いったん「マジカルナンバー7は妥当である」という説がいろいろな証拠によって認められるようになってからなら,「やっぱりマジカルナンバー7だから7件法がいいよね」と言い出すのは間違っていないような気もするのです。

この揺らぎは,Millerの時点では,マジカルナンバー7が(言葉どおりの意味での)仮説として述べられていたのに対して,7件法がよいと論ずるときには,それが心理学的実在性を持つ概念として捉えられていることから起こるのではないでしょうか。

つまり,

Miller7件法マジカルナンバー7(仮説
現代人マジカルナンバー7(心理学的実体7件法

となっているのだから,循環は見かけ上のものであり,問題はないと考えるわけです。

しかし,この解釈も何か腑に落ちないような気もします。

仮説をもとに予測を行う,というのはまさに科学の目的とするところですから,とりあえず仮説を受け入れた上でそこから予測を導こうとする態度は適切なのかもしれません。
ただ,この場合は,仮説のもととなった(実際には傍証ですが)事実と予測される事実がまったく同じなのです。
それでは一歩も進んでないのでは?という気もしてしまいます。

いや,以前にはわからなかった7件法がよく使われる理由が説明できるようになったのだから,進展はあったのだ,という主張もできるかもしれません。

マジカルナンバーだけになのか,謎が謎を呼んでしまいました。

ちなみに,評定尺度は,「どうせ7つも使わないから」という理由で5件法に決まりました。


Miller, G. A. (1956). The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our capacity for processing information. Psychological Review, 63, 81-97. [web版?a][web版?b]
(ミラー,G. A. 高田洋一郎(訳) (1972). 不思議な数“7”,プラス・マイナス2-人間の情報処理容量のある種の限界-. 心理学への情報科学的アプローチ. 培風館. pp. 13-44.)

(2007-07-13)
Tag: 記憶
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