MPT モデルによるソースモニタリングデータの分析/ソースモニタリング実験のパラダイム - 井関龍太のページ

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MPT モデルによるソースモニタリングデータの分析/ソースモニタリング実験のパラダイム

Last-modified: 2013年09月28日 (土) 18:08:51 (1871d)
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典型的なソースモニタリング実験のデータ構造

まず,説明の前提としてソースモニタリング実験の手続きとそこから得られるデータの構造について確認しておきます。

典型的なソースモニタリング実験の手続きは,およそ以下のようなものでしょう。
最初に,学習段階として,刺激(単語など)をA(e.g.,男声)とB(e.g.,女声)の2つの文脈のいずれかにおいて提示します。

テスト段階では,各項目に対して(1)学習段階で提示されたものか,提示されなかったものかをまず判断します(再認判断)。
“提示された”と判断された場合,さらに次の判断に進み,その項目が(2)文脈Aで提示されたか(男声で提示されたか),文脈Bで提示されたか(女声で提示されたか)を判断します(ソース判断)。

その結果,項目のタイプは,ソースA項目,ソースB項目,新項目の3種類になります。
この3種類の分類は,提示した項目の側にも,実験参加者の反応タイプにも当てはまります。
したがって,データとしては,3×3のクロス表が描けることになります。
例えば,Dodson et al.(1998)が例に挙げているデータは,以下のような表にまとめられます。

ソースA反応ソースB反応新反応
ソースA項目61215177
ソースB項目12364374
新項目1918383

MPTモデルを使った分析では,元データとしてこのようなクロス表を用いることが多いので,特に述べておきました(ソフトウェアによっては,個人ごとのデータから分析を行えるものもあります;また,さらに進んだ分析では個人ごとのデータが必要になる場合もあります)。

実際の研究には,手続きにも様々なバリエーションがあるかとは思いますが,以下では,このようなデータ構造を想定して話を進めます。

なぜMPTモデルか

ここまで,ソースモニタリング実験のデータ構造を見てきましたが,そもそもなぜMPTモデルによって分析するのでしょうか。

MPTモデルを用いていない古典的なソースモニタリング研究では,上で述べたようなクロス表データに対して比率に基づく分析が行われることが多かったといえると思います。
例えば,ソースを正しく判断できた項目の数を正しく再認できた旧項目の数で割ることによってソース同定率を算出するなどの分析法です。

Batchelder & Riefer(1990)によると,このような分析法にはいくつかの問題点があります。
第一に,この統計量は別々のソースを通してデータを結合しています。
このやり方では,各ソースでの検出可能性(再認可能性)とソース弁別可能性の違いを無視することになってしまいます。
例えば,女声で提示された単語は,そもそも男声で提示された単語よりも再認しやすかったかもしれません。

第二に,ソースモニタリングのデータは,ソース判断の部分を無視すれば,通常の旧新再認のデータとして扱えます。
そうだとすれば,ヒットとフォルスアラームを別々に扱うのは好ましくありません。
この場合,信号検出理論にしたがった測度が推奨されることでしょう。

第三に,上に挙げたようなソース同定率は,異なる認知過程の組み合わせ効果を反映している可能性があります。
ソース同定率は,旧項目を正しく再認できた場合の正ソース同定の条件つき確率ですが,実験の中での全体的な再認のレベルに依存することが指摘されています。
そのため,条件ごとに全般的な再認率が異なる場合,ソース同定率の変化は,ソース弁別可能性でなく検出可能性の違いによって生じたものかもしれません。

これらの問題には,個別に対処できる可能性もありますが(ソースごとの再認率とソース同定率を産出する,d'を用いるなど),一度に解決できる方法としてMPTモデルを用いることができます。
また,仮説検定に加えてパラメータ推定(そして,モデルの適合度の評価)を行えることも利点として挙げられると思います。

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