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#author("2023-01-06T16:15:22+09:00","default:riseki","riseki")
*&color(#6A5ACD){他の分散分析ソフトとの仕様の比較}; [#jdadb66e]
ANOVA君の特徴を明確にするために,他の分散分析ソフトとの仕様の違いを表にまとめてみました。
|BGCOLOR(LIGHTGRAY):|CENTER:BGCOLOR(LIGHTGRAY):[[''ANOVA君''>ANOVA君]]|CENTER:BGCOLOR(LIGHTGRAY):[[''js-STAR''>http://www.kisnet.or.jp/nappa/software/star/]]|CENTER:BGCOLOR(LIGHTGRAY):[[''ANOVA4''>http://www.hju.ac.jp/~kiriki/anova4/]]|
|COLOR(NAVY):''平方和の計算法''|CENTER:[[タイプⅡ,タイプⅢ>ANOVA君/平方和のタイプ]]|CENTER:タイプⅠ+非加重平均法|CENTER:タイプⅠ+非加重平均法|
|COLOR(NAVY):''単純主効果の検定における誤差項''|CENTER:水準別誤差項|CENTER:水準別誤差項(混合要因計画を除く)|CENTER:プールした誤差項|
|COLOR(NAVY):''単純交互作用の検定''|CENTER:なし|CENTER:なし|CENTER:あり|
|COLOR(NAVY):''多重比較の方法''|CENTER:[[修正Bonferroniの方法>ANOVA君/多重比較の方法]]|CENTER:LSD法,HSD法,Bonferroni法,Holm法|CENTER:Ryan法|
|COLOR(NAVY):''反復測定要因の多重比較における誤差項''|CENTER:[[水準別誤差項>ANOVA君/複数の要因がある計画における多重比較]]|CENTER:プールした誤差項|CENTER:プールした誤差項|
|COLOR(NAVY):''球面性検定とεによる調整''|CENTER:[[あり>ANOVA君/球面性検定の出力]]|CENTER:なし|CENTER:なし|
※ANOVA君以外のソフトの仕様は主に出力からの推測によるものです
※タイプⅡ,タイプⅢ平方和は,釣り合い型計画の場合には,タイプⅠ平方和と同じ結果になります
※非加重平均法は,タイプⅢ平方和の近似法です
*&color(#6A5ACD){水準別誤差項の採用}; [#a83331b0]
ANOVA君で反復測定要因を含むデザインでの単純主効果の検定や反復測定要因の多重比較の際にすべて水準別の誤差項を採用しているのは,球面性の逸脱によるタイプⅠエラー率の増加への配慮のためです。
Keselman & Keselman(1993)によれば,いずれの場合にもプールした誤差項は推奨されません。
この論文では“多標本球面性の仮定が満たされないときには,被験者内対比の標準誤差を推定する際に様々なタイプのプールした誤差分散の推定値を用いることは有意性の検定に歪みを生じる(特に,デザインが非釣り合い型であるとき)”(Keselman & Keselman, 1993, p. 120)と述べられています。
単純主効果の検定における被験者間効果の場合,デザインに含まれる被験者間要因と被験者内要因の両方を通して分散の等質性が成り立たなければプールした誤差項に基づく方法は妥当性を確保できないとされています。
これはほとんど満たされることのない仮定であるとKeselman & Keselmanは述べています。
単純主効果の検定における被験者内効果についても,プールした誤差項に基づく検定の妥当性は(多標本)球面性の仮定に依存します。
仮定の逸脱によるバイアスを回避する方法のひとつは,水準別誤差項を用いることです。
多重比較の場合にも同様のことがいえます。
(もうひとつのアプローチとしては多変量分散分析,MANOVAが勧められることが多いと思いますが,実際には,MANOVAもまた多標本球面性(のうち群間で共分散行列が均質であるという仮定)が成り立っていることを必要とします。混合モデルを用いて多標本球面性を仮定しない形で共分散構造をモデル化するのが現時点で考えられる代案です。)
心理学,教育学分野のデータでは(多標本)球面性が満たされることはほとんどない,というこの論文の前提がどの程度妥当かはわかりませんが,保守的に考えるならば水準別誤差項のほうが無難ではないでしょうか。
現状での球面性検定は分散分析ほどには信頼性が高くはなく,球面性検定が有意でなかったからといってただちに球面性の仮定が成り立つとは考えないほうがいいようです(Abdi, 2010; Winer et al., 1991)。
(そもそも棄却されなかったからといって帰無仮説が成り立つとはいえないのですが,球面性検定では球面性の仮定が成り立っていなくても有意でないという検定結果が得られる確率が分散分析よりも高いということです。)
Howell(2012)は,Mauchlyの検定の結果は無視して常にεによる修正を行うようにと勧めています。
これらのことを鑑みて,ANOVA君では基本的に水準別誤差項を使用しています。
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Abdi, H. (2010). Greenhouse-Geisser correction. In N. J. Salkind, D. M., Dougherty, & B. Frey (Eds.), '''Encyclopedia of research design'''. Thousand Oaks (CA): Sage. pp. 544-548.
Howell, D. C. (2012). '''Statistical methods for psychology (8th Edition)'''. Wadsworth, Cengage Learning.
Keselman, H. J., & Keselman, J. C. (1993). Analysis of repeated measurements. In L. K. Edwards (Ed.), '''Applied analysis of variance in behavioral science'''. New York: Marcel Dekker, Inc. pp. 105-145.
Winer, B. J., Brown, D. R., & Michels, K. M. (1991). '''Statistical principles in experimental design (3rd edition)'''. Boston, Massachusetts: McGraw Hill.