#author("2023-01-04T15:03:48+09:00","default:riseki","riseki")
院生時代の指導教員の名言に「分散分析は研究者の発想を貧しくする」というものがあります。
これは,分散分析を使用することのみを前提として研究計画を立てると,分散分析にかけることのできる測定手法を用いて,要因計画に落とし込むことのできる操作を行い,これらの条件を満たすような仮説しか立てられなくなる,といったことを意味する発言だと思われます。
ここには,分析方法が研究内容を規定する,という洞察があります。
ここから2つの実践的な方向性を導くことができると思います。
ひとつは,分散分析を徹底的に勉強するということです。
分散分析は意外に一筋縄ではいかない分析法です。
要因計画とセットになっていることもあり,分散分析には何となくウェルメイドな分析方法といった趣きがあります。
しかし,実際には,被験者内要因が含まれるか,分析の目的は何かといった状況によって適切な運用法が細かく違ってきます。
また,データや研究対象によっては,共分散分析や多変量分散分析といったバリエーションを用いた方がより適切ということもあるでしょう。
つまり,分析方法をより意識化することで,望ましい研究計画を実現できるようにするという方向性です。
もうひとつは,分散分析以外の分析方法も学ぶということです。
研究計画が分析方法に依存しており,分散分析のみに頼ることが発想を貧しくするのなら,逆に考えれば,それ以外の方法を用いることができれば,研究計画の幅を広げることができるのではないでしょうか。
新たな分析方法が科学的研究を推進するというのはよく聞きますが,同じことが研究者の発想そのものを刺激することもあるのではないでしょうか。
RIGHT:(2009-11-17)
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