MPT モデルによるソースモニタリングデータの分析/MPTモデルによる仮説検定 の変更点 - 井関龍太のページ

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MPT モデルによるソースモニタリングデータの分析/MPTモデルによる仮説検定 の変更点


**&color(#000080){仮説検定}; [#d015007c]
以上で一通りの分析はできました。
後は,適合度を見て,パラメータ制約を変えたり,さらには,モデルの構造そのものを変更したりして,より適合の高いモデルを作るといったアプローチが可能でしょう。
しかし,MPTモデルは,パラメータ推定だけでなく,仮説検定にも威力を発揮します。

ここでは,Dodson et al.(1998)のデータ例をもとに説明を進めることにしましょう。
この研究では,ソースモニタリング実験のときに,単語を聴覚提示する際の声の性別を操作しました。
ソース判断を行うので,ソースAとソースBで別の人の声を使うのは当然なのですが,このときにAとBが同性か異性かということも判断の手がかりになるのではないかと考えたのです。
AとBのどちらも男声の場合(声の類似度が高い)にはソースを区別しづらそうですが,一方が男声でもう一方が女声であれば(類似度が低い),よりソースを正しく判別できるのではないでしょうか。
低類似条件と高類似条件で実験を行った結果,データは以下のようになりました(Dodson et al., 1998, Table 2A, 2B)。

&color(navy){''低類似条件''};
||男声A反応|女声C反応|新反応|
|男声A項目|612|151|77|
|女声C項目|123|643|74|
|新項目|19|18|383|


&color(navy){''高類似条件''};
||男声A反応|男声B反応|新反応|
|男声A項目|521|210|109|
|男声B項目|172|566|102|
|新項目|28|32|360|

このデータをmdt形式で以下のようにまとめて記述します。

 voice_similarity
 1 612
 2 151
 3 77
 4 123
 5 643
 6 74
 7 19
 8 18
 9 383
 10 521
 11 210
 12 109
 13 172
 14 566
 15 102
 16 28
 17 32
 18 360
 ===

ここでは,この後の仮説検定を行う都合から,低類似条件と高類似条件でカテゴリーラベルが異なるようにしてあります。
これに合わせて,eqnファイルの方も以下のように書き換えます。

 30
 1 1 LD1*Ld1
 1 1 LD1*(1-Ld1)*La
 1 2 LD1*(1-Ld1)*(1-La)
 1 1 (1-LD1)*Lb*Lg
 1 2 (1-LD1)*Lb*(1-Lg)
 1 3 (1-LD1)*(1-Lb)
 2 5 LD2*Ld2
 2 4 LD2*(1-Ld2)*La
 2 5 LD2*(1-Ld2)*(1-La)
 2 4 (1-LD2)*Lb*Lg
 2 5 (1-LD2)*Lb*(1-Lg)
 2 6 (1-LD2)*(1-Lb)
 3 7 Lb*Lg
 3 8 Lb*(1-Lg)
 3 9 (1-Lb)
 4 10 HD1*Hd1
 4 10 HD1*(1-Hd1)*Ha
 4 11 HD1*(1-Hd1)*(1-Ha)
 4 10 (1-HD1)*Hb*Hg
 4 11 (1-HD1)*Hb*(1-Hg)
 4 12 (1-HD1)*(1-Hb)
 5 14 HD2*Hd2
 5 13 HD2*(1-Hd2)*Ha
 5 14 HD2*(1-Hd2)*(1-Ha)
 5 13 (1-HD2)*Hb*Hg
 5 14 (1-HD2)*Hb*(1-Hg)
 5 15 (1-HD2)*(1-Hb)
 6 16 Hb*Hg
 6 17 Hb*(1-Hg)
 6 18 (1-Hb)

このモデルは,低類似条件と高類似条件にそれぞれ同じ構造の別のツリーを当てはめたものになっています。
そこで,ツリーの数は全部で6本になっています。

このモデルに,先ほどと同じ制約を置いて分析してみましょう。
つまり,低類似条件の中でD1 = D2,d1 = d2,a = gとし,高類似条件の中でもD1 = D2,d1 = d2,a = gとします(低類似条件のパラメータはL,高類似条件のパラメータはHを頭につけて表すものとします)。

すると,低類似条件と高類似条件を個別に分析した場合と同じパラメータが得られます。
GSUP{2}は,2つのモデルのGSUP{2}を足した値に一致します(GSUP{2} = .98)。
パラメータを見てみると,高類似条件のソース弁別可能性(Hd1)は.49,低類似条件のそれ(Ld1)は.65で,低類似条件の方が正確にソースを弁別できていそうに見えます。

このことを統計的に検定してみましょう。
ここで,“Hd1 = Ld1”と制約を置きます。
高類似条件と低類似条件でソース弁別可能性に差がない,とするわけですね。
この制約は,この文脈でのいわゆる帰無仮説に当たると思います。

手続き的には,multiTreeの“Parameters”タブを開いて,この制約を反映させます。
注意したいのは,“Ld1 = Hd1”とする前に“Ld2 = Hd1”と変更しておくことです。
これは,ソフトウェアの仕様で“Ld1 = Ld2”の制約を置いたままだとLd1に等値制約を置けないためです(“free”になっているパラメータとの間にしか等値制約を置けないようにしているのでしょう)。
この制約ができたら“Run analysis”を実行します。
通常通り,適合度とパラメータが得られます。
ここで得られたGSUP{2}(GSUP{2} = 26.79)をもとに検定を行います。

“Hd1 = Ld1”の制約を置いたモデルと置かないモデルのGSUP{2}の差は,26.79-.98=25.81です。
また,この2つのモデルの自由度の差は1です(= 6 - 5)。
そこで,カイ二乗値25.81,自由度1としてカイ二乗検定を行います。
p値は<.001で有意になります。
したがって,これら2つのモデルの間には有意な差があることになります。
しかも,“Hd1 = Ld1”の制約を置いたモデルで大きく適合度が下がっている(GSUP{2}が大きくなっている)わけですから,この制約を置かない方がいいというわけです。
そこで,“Hd1 = Ld1”でないと仮定した方がよい,つまりは,高類似条件と低類似条件のソース弁別可能性は有意に異なると結論できます。

同様のやり方で,他のパラメータについても条件間で差があるかどうかを検定することができます。
研究の目的によっては,反応バイアス(b)が条件間で異なるかとか,推測率(aまたはg)が異なるかといった分析を行うことにも意味があることでしょう。
また,異なるパラメータ間に等値制約を置くべきか否かを判断する基準としても使えると思います。
例えば,“a = g”と置くことが(データ適合の観点から見て)妥当かどうかは,等値制約を置いたモデルと置かないモデルのGSUP{2}を比較することによって検定できます。

**&color(#000080){MPTモデルの応用可能性}; [#oe3e318e]
今回は,ソースモニタリング実験に即して紹介してきましたが,MPTモデルはより幅広い研究領域に適用されています(レヴューとして,Batchelder & Riefer, 1999; Erdfelder et al., 2009)。
例えば,対連合学習による干渉パラダイム,自由再生における項目のクラスタリング,過程分離手続きのデータ,目撃証言,後知恵バイアス,4枚カード問題,項目反応理論への応用などがあります。

**&color(#000080){引用文献}; [#tee495df]
Batchelder, W. H., & Riefer, D. M. (1990). Multinomial processing models of source monitoring. '''Psychological Review''', ''97'', 548-564.
Batchelder, W. H., & Riefer, D. M. (1999). Theoretical and empirical review of multinomial process tree modeling. '''Psychonomic Bulletin & Review''', ''6'', 57-86.
Dodson, C. S., Prinzmetal, W., & Shimamura, A. P. (1998). Using Excel to estimate parameters from observed data: An example from source memory data. '''Behavior Research Methods, Instruments, & Computers''', ''30'', 517-526.
Erdfelder, E., Auer, T.-S., Hilbig, B. E., Aßfalg, A., Moshagen, M., & Nadarevic, L. (2009). Multinomial processing tree models: A review of the literature. '''Zeitschrift für Psychologie/Journal of Psychology''', ''217'', 108-124.
Hu, X., & Phillips, G. A. (1999). GPT.EXE: A powerful tool for the visualization and analysis of general processing tree models. '''Behavior Research Methods, Instruments, & Computers''', ''31'', 220-234.
Moshagen, M. (2010). multiTree: A computer program for the analysis of multinomial processing tree models. '''Behavior Research Methods''', ''42'', 42-54.
Stahl, C., & Klauer, K. C. (2007). HMMTree: A computer program for latent-class hierarchical multinomial processing tree models. '''Behavior Research Methods''', ''39'', 267-273.

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